或る校閲者のblog

校閲の仕事のことや、日常のことなど、徒然なるままに綴ります

読書週間事業講演会「出版社の本づくり秘話 伝えたい編集・広めたい営業」

図書館で講演会をやっていると聞きつけ、参加してきました。

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筑摩書房平凡社原書房・柏書房社長、元社長4名による講演会とのこと。

 

さて、感想としましては編集の話はさることながら、営業の話が非常に興味深く楽しかったです。書店営業はすっと想像できたのですが、図書館営業なんてのもあるのだなあと。。各地を営業して回ってかつ本を売り込むのだから体力って大切ですね。

個人的に筑摩書房顧問の菊池さんの、「自社の本しか読んでない営業はいらない」という強いお言葉が印象に残っています。直木賞芥川賞本屋大賞など、全ては読めないとしても自分が読める分の本は読んでほしい。自社の本の宣伝をするにあたっても、他社の本を読んでいるからこそわかる、みえてくるものもあるでしょうし、「営業こそ本を読め」というスピリットは金言であるなと感じ入りました。

 

全体として会場には「本が好きで好きでたまらない」という人々の熱気にあふれていていました。出版不況といわれているけれど、なんとか本が読まれるようになってほしい、本をみんなに読んでほしい、そういう信念をもった参加者が多いなと。中でも非正規雇用の司書職の方の、「本を買いたくても収入が少なくて買えないのが悔しい、もどかしい」という話は身につまされました。日本の司書はほとんどが非正規採用ばかりで、正規職員は一部の自治体の公務員枠といったもので、本当に狭き狭き門です。専門職であり資格も必要とされるのに、一体どうしてこれほどにまで非正規採用が多くなったのか、司書が軽んじられてしまうようになったのかが私には不思議でたまりません。十数人規模の小さな出版社が何千とある日本では、収入の少なさは出版社員も書店員にも共通していることだと思いますし、出版業界の全体の貧しさのようなものを感じて切なくなりました。

そうはいっても売れる本は売れますし、いい本もたくさんあります。図書館の予算が少ない、待遇が悪い、というマイナスの面をみて嘆くばかりではなく、どうすれば出版業界をより元気にさせられるのか、改善できるのかということを前向きに考えていきたいですね。

私にできることは日々の校閲の仕事を頑張って紙媒体の質を保つこと、そしてこうした思いを発信して同じように感じる方を一人でも増やしていくことかなあと思いました。名の知られてない個人でもいくらでも発信できる社会ですから、どんどん活用していこうと思います。

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各出版社の本など

ふらっと立ち寄った図書館で、本当に貴重で面白い話を伺うことができたので、社長・元社長四氏ならびに講演会事務局の方々にはただただ感謝です。